にゃんこ日記 ( 脱走編 )

おうち日記 の元捨て猫・福ちゃんに関する日記を、こちらに転載しています。




福ちゃんとの出会い in 白山中居神社(10月7日)
福ちゃんと出会った撮影旅を21世紀旅日記にUPしました。

福ちゃん脱走の話(2013年6月)
長くなりそうなので、書きあぐねていた福ちゃん脱走の話。
事件は私の桜旅の真っ最中、5月の母の日の前に遡る。

その日は大阪ガスの点検の人が来たので、お風呂場の窓を開けたらしい。
このお風呂場の窓、網戸越しにお外を眺められる福ちゃんのスウィートスポットだった。
網戸の向こうには幅7センチ間隔の鉄格子。この幅について、私は「こんな細い隙間から、外になんか出られないよ」という意見だったし、猫のミラクル性を信じている母は、「これだけあったら、外に出られる」と主張してはいたものの、むしろここより、お客さんが来た時に無防備に開けてしまう玄関のドアのほうがよっぽど危ない、と誰もが思っていた。

ちなみに福ちゃんの耳の内側と耳の内側の幅を計ってみると7センチ以上はありそうだ。
顔はもちろん、大分成長した福ちゃんの胸囲を考えると、7センチの隙間を抜けられるはずはなかった。
日々着々と成長する福ちゃんを見ながら、私なんかは心の中で「これで脱走のリスクはゼロね」とほくそ笑んでいたし、 福ちゃん自身も、窓の外を飛ぶ蝶々やツバメ、歩く猫や人を見ては、「どうしよう。どうやったら、あそこへ行けるんだ」と興奮するけど、網戸さえあれば、それをどうこうしてまで外へ出る気配もなかった。
網戸を引っ掻いたりすらしないおりこうさん。だから気をつけなきゃと思いつつも油断していた。

その日、福ちゃんは2回、脱走したという。母もまさか網戸を開けた風呂場の窓から脱走したとは思わずに、最初はいないことにすら気が付かなかったらしい。
そのうちご飯の時間になっても、ベタベタとくっついてこない、ねだってこないので、やっと気づいたらしい。で、こりゃ大変と慌てて探し出した。

さて、わが家の近所の猫事情。
うちのお隣さんはチロというおばあさん猫を飼っている。
私の日記「お隣ニャンコ」に登場しているが、元野良猫で正確な年齢はわからないが、お隣に来てからでも20年近くなる老齢。若き日はメスなのに一帯のボスを務め(←たぶん)、メスなのに、お尻からピュッと縄張り主張のスプレーをしたのを、私は見たことがある。一時はうちにしょっちゅう遊びに来て、私とも甘いひと時を過ごしたが、最近はめっきり弱り、めったに外に出てこなくなった。

で、前に福ちゃんが脱走した時は、やはり猫の臭いがするのか、勝手にそのお宅に入っていき、最終的にはそこのご主人に抱っこされてわが家に送還された。

それで母はきっとまたお隣さんかと訪ねていったら、今回は違ったらしい。
猫好きのお隣の奥さんも一緒に探してくれて、10軒ほど離れた所の猫を4匹飼っているおうちの庭先で、どうやら福ちゃんらしい声がしたという情報をくれた。

この10軒ほど離れたお宅の猫はお行儀がよくて、臆病な一匹を除く3匹が、お天気の日には長いリードでつながれた状態で庭先で日向ぼっこしている。
3匹の内訳はメスが2匹、オス一匹。この猫ちゃん達が日向ぼっこする様子が、実はうちの2階の出窓と、そしてたぶんお風呂場の窓からも見えるのだ。
で、福ちゃんはきっと前から、そこに行きたい行きたいと思っていたのだろう。
母が脱走先に駆け付けた時には、「まだおうちには帰りたくない」って感じで、どんどんよそのお宅の奥へ・・・人間の手の届かない所へ引っ込んでしまった。どうにもならないので一旦引き揚げ、あとでそこの奥さんに捕まえてもらって第一次脱走は終了。

その後、お外に出て汚れてしまった福ちゃんの手足体を、母は濡れタオルで拭いた。
福ちゃんは嫌がったが仕方あるまい。
で、直後、福ちゃんは2回目の脱走を試みた。
ゴタゴタに紛れて、まだ開けっ放しになっていたお風呂場の窓から・・・
しかし2回目の時は、福ちゃんが狭い鉄格子の間からすり抜けていくのを、母が目撃した。
あっ、と手を伸ばし、尻尾をつかもうとしたが、間に合わなかったらしい。

そんなドタバタの最中、私がたまたま母に電話した。
ちょうど母の日が近かったので、旅先からお菓子を送り、その報告をしようと思ったのだが、もうそれどころじゃなかった。
だけどね。母のパニックになった状態を聞いて、私は考えた。

もう、いなくなったら、いなくなったでいいんじゃないかと。自分から出ていくなら、それも仕方あるまいと。
冷たいようだが、福ちゃんがいてくれて、すごく精神的に助かった、癒されているのは確かだが、この先将来のことを考えると・・・私が一人暮らしになってしまったら・・・どうなるんだろう。もちろん飼った限りは捨てることは考えられない。でも逃げたら逃げたで、それは神様の思し召しなのかも・・・と考えた。何より、母にこういう気苦労をかけることは好ましくない。

だから、心を鬼にして言った。
「玄関の外に、もし帰ってきたら寝られるように段ボール箱だけ置いて、あとはドアを閉めて、お母さんはもう寝て」と。
帰ってこないなら帰ってこないで、それは仕方ない。

母は、玄関のドアを開けたままにして、餌と缶詰を置いて、寝ないで待ってると言ったんだけど、甘やかしちゃダメ。脱走したら、缶詰がもらえると思われたら大変。
母は「猫は悪いことしたと思ってないんだから、いくら言っても駄目だ。」というけど、私としては「そうだとしても、その負担をお母さんが負うことはない」と伝え、「ああ福ちゃん、サヨナラ。楽しい時間をありがとう。」とある程度覚悟をきめた。
もし自分が京都にいたら、かなり長い時間探し回っただろうが、私自身が自宅から何百キロも離れた場所にいるんだから、こういう時にいなくなったのも思し召しかと思った。

けれど、私より優しい母は、結局少しだけドアを開けて、廊下に缶詰を置いたらしい。
しばらくして、缶詰を食べる音が聞こえたので行ってみると、福ちゃんがフンフン鼻を鳴らしながら缶詰を突ついてたらしい。
脱走していたのは、時間にしたらたった何時間かの出来事だが、母にしたら大きなストレスになった時間だろう。とても申し訳ない。
蛇足だが、この2回目の脱走劇の時、お隣の奥さんも10軒離れた奥さんも、「お腹すいたら帰ってきますよ」と楽観的だったらしい。ほんとにその通りだったわけで・・・一人泣きそうになって探した母が、よけい可哀想・・・

とまあ、こういうことが、私の留守中にあった。
話は聞いていたけど、私はイマイチ脱走経路が信じられなくて、で、ある日、お風呂場の掃除をした時に、風通しをよくしようと、またしても網戸を開けてしまった。

「あれ?福ちゃんがいない」
と思った時には、もう遅かった。
あいつ、お風呂場の網戸が開くのを、見張ってるのか?

慌てて表に出ると、お隣の奥さんがちょうど歩いている。
「また脱走したんです。」
見かけたらつかまえておいてくれるようお願いして、3匹の猫のおうちへ向かう。
ちょうどそこの奥さんも外に出ていたので、また脱走した旨を伝え、福ちゃんがお邪魔したら教えてくれるよう頼んで、うちに帰る。

まもなく、そこの奥さんが訪ねて来てくれて、やっぱり福ちゃんは3匹の猫のところへ訪問して、「猫の気が立ってしまって」いるらしい。
私が行くと、福ちゃんはそこのおうちの車の下にいて、そこのおうちのオス猫がシャーっと威嚇すると、弱々しくシャアと口を広げた。
福ちゃんが威嚇するのを見たのはこれが初めてだったが、残念ながら全然怖くない感じなので、あきれた私が「わかったわかった」と手を伸ばすと、ピッと手を引っ込めた。

母が「缶詰持ってこようか」と甘やかすことを言い出すので、ダメダメといっている間に、そこの奥さん、慣れたもんで、お皿にマタタビの粉を入れて持ってきてくれた。
「ほらほら」と車の下の福ちゃんに差し出すと、福ちゃんはノコノコと前進したので、素早くキャッチ。自宅送還。
ほんとはね。そこの猫と仲良くなれそうなら、お願いして、時々交流を深めさせてもらおうかと思ったんだけど、そこのオス猫に明らかに拒絶されていたので、その言葉は呑み込みました。

車高の低い車の下にいた福ちゃんは、すっかり煤っぽくなっていたので・・・というか、換毛期でもあるし、前に洗ったのは去年の8月だし、ずっと私は福ちゃんを洗いたかったので、ここぞとばかりにお風呂場へ。脱走したら、嫌なことが待ってるんだよ。と諭しながら、鳴き続ける福ちゃんを洗った。
ご近所さんに猫の虐待と間違われるといけないから、強制送還の間も、周りに聞こえるように、「お外出たんならね。お風呂入ってきれいにしなきゃダメだよ」となるべく大きな声でしゃべりながら帰ったので、多分誤解はされてないでしょう。


猫 シャンプー 猫 シャンプー

濡れても、それほどみすぼらしくなかった福ちゃん


それにしても福ちゃんがエライ!と思うのは、あんなに嫌なのに、あんなに鳴いてるのに、洗われる間、逃げようとはするけど、洗う私を攻撃してこないこと。そして、洗い終わった後も、私を避けることなく、くっついてくること。
この素直さ。きっと元飼い主(捨てた人でもあるわけだけど)からよっぽど可愛がられていたんだろうな。
シャンプー後の福ちゃんは、前以上にフワフワで、猫が苦手らしい母も、気持ちいいと撫でまくってました。

その後、しばらくはお風呂場は出入り禁止にしたが、今は網戸を閉めて、出入り自由にしている。
今までに数度実行した脱走も、たいていは「あ、ドア(窓)が開いてる」→「じゃあ、お外に行ってくるね」的なケースばかりで、要は人間側の不注意が元なんだけど、せいぜい数時間で何事もなかったように(悪びれずもせず)帰ってくる。今のとこ、強行突破とか、何が何でも出たいという風でも、網戸に挑戦する気配もない。出来ればお外に出たいなあと思ってるのはわかるんだけど。。。

ちなみにどうして外に出すのが嫌かといえば、第一には猫の安全。前にお隣に短期間いた子猫のアイちゃんは、ある日突然行方不明になった。猫さらいが実際にいるかどうかわからないが、その時お隣のご主人の言った言葉、「最近(野良)猫がいつのまにかいなくなっていると思いませんか」 確かにそうなのだ。チロと張り合ったような元気いっぱいのボス猫とかでも、気が付いたら姿を見かけなくなっていたりする。

猫さらいがいないとしても、うちの周りは車もそれなりに走っているので、交通事故のリスク。
猫同士の喧嘩のリスク。
それから最近は草むらにいるダニで死者が出たりもしているから、それも怖い。
ダニやノミを駆除する薬(フロントライン)とかもあるけど、あれはあれで猫の体にもあまり良くないらしい。私の留守中の脱走の後は、仕方ないから獣医さんに連れて行ってもらって、フロントラインをしてもらったけど、毎月欠かさずに使用するのは避けたい。

あと、外に出たら、おトイレは外にするだろうから、近所に迷惑がかかる。
私は顔見知りの猫が、外のあちこちでおトイレをしているのを知っているけど、自分ちの猫じゃないから見て見ぬふりをしてる。が、自分の猫だったらそうはいかないだろう。

猫をうちに閉じ込めておくのは賛否両論あるだろうが、猫にとって一番辛いのは、猫の意志と関係なく、捨てられてしまうこと。
屏風岩の遠足の時の福ちゃんの尋常じゃない怯え方を見て、以前捨てられたこと(そして飢餓を経験したこと)がよっぽど辛かったんだとわかったから、外に出られないのは可哀想だが、出来ればわが家で我慢してもらうしかない。



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